《余命10年》生肉11

栏目:影视资讯  时间:2022-10-29
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  ちょっとした好奇心だった。けれど、好奇心なんかで和人の苦悩を現き見た自分がすぐに恥ずかしくなった。

  東京へ戻った茉莉は、布を買いに行くついでと自分に言い訳をし、インターネットで調べた和人の実家を見にいってしまった。

  神田という都心にありながらそこだけ違う時間が流れているような厳かな庁まいだった。緑の静寂に囲まれた和風建築の屋敷は堂々としていて迫力があり、刻んできた歴史とそこに住まう人間の格式の高さを思わせた。

  重厚な門の柱に掲げられた「桐庵流」の看板を見上げた時、和人の憂響そうな横顔を思い出した。

  しばらくそこに立ちつくしていると女性たちのざわめきが聞こえてきて、慌てて通行人を装った。買いたての布を両手で握りしめながらすれ違ったのは、

  品のいい身なりをした婦人の集団だった。騒がしくないトーンで楽しそうにおしゃべりをしながら彼女たちは後ろの門の中へと吸い込まれていった。生徒さんだろうか。

  茉莉は足を止めてもう一度振り返った。

  和人はいずれあんな人たちの上に立つのだろうか。あの子がこんな大きな家を取り仕切れるのだろうか。茶道の世界がどういうものなのか知らないけれど安易なものではないと屋敷が酸し出している威厳から充分に伝わってくる。

  携帯電話のメール確認をする。圏外にいたわけじゃないのだからメールが来れば当然気付いているはずで、着信音がなかった以上来ているわけがないのだ。最初に返事を返さなかったのは自分だ。来ないように自分が仕向けたくせに、来ないことが寂し

  いなんて予盾している。

  美幸の住所を調べるために出しっぱなしにしていた卒業文集を、帰って来て一番に見た。

  和人はおぼろげな記憶の中よりもつと精悍な顔をしていた。茉莉がいつか縫ったのかもしれない白いシャッを着て黒いズボンを穿いた私立のお坊ちゃまみたいな服装は、田舎の小学生の中で明らかに浮いていた。耳が隠れるくらいまで伸びたストレートの

  黒髪の少年はその風貌だけで異端児の雰囲気を確し出していた。文集を読むと、将来は宇宙飛行士になりたいですと書いてあった。どうすれば字宙飛行士になれるのか明確なプランが立てられていて、どうしてそうなりたいかという問いに、僕は空が飛び

  たいと、はつきりとした綺麗な字で書かれていた。神童の記録を目の当たりにすると、笑いが込み上げて来て和人と一緒にいた時のように声を出して笑った。

  生意気で大人びた子供が、初恋のタケルより愛しかった。

  群馬で過ごした数日は、まるで発病する前の思い出のように、煌めいた記憶だった。

  また夏が来て、茉莉は26歳になった。

  あっという間に時が流れていく。

  毎年誕生日には枯梗が焼いてくれるケーキの句いが家中に漂っていたけれど、今年はあの甘い句いもしなければにぎやかな声もなく、家は静かだった。

  イベントのための原稿を大分仕上げ一段落ついていると、家の電話が鳴った。時計を見上げるともう7時になっていた。ディスプレーに群馬の市外局番が記されているのを見て、親威だろうかと慌てて受話器を取った。

  「もしもし、高林です」

  「あの、真部と申しますが、茉莉さんはご在宅でしょうか」

  どこかの勧誘マニュアルのような口調だったけれど、それが和人の声であることはすぐにわかった。携帯番号を知っているはずなのに、自宅にかけてくるのは反則だ。

  逃げようがない。

  「あの……カズくん?」

  「茉莉ちゃん?」

  和人の声だった。3ケ月ぶりの「茉莉ちゃん」に胸が締めつけられた。

  「元気? ごめんね、電話しちゃって」

  「ううん。よくわかったね、家電」

  「この間偶然お姉さんに会ったんだ。それでこう…。それよりも! 茉莉ちゃん、誕生日おめでとう」

  きつと偶然出会った姉から家の電話番号を聞き出したのだろう。枯梗は警戒心のまったくない人だから、小学校の友人だと言えばすぐに教えたはずだ。

  和人は携帯電話にかけても茉莉が出ないと思い、わざわざ自宅の電話番号をつきとめかけてきたのだろう。

  焦っている様子で早口で話す和人から、彼の不安や戸惑いが伝わってきて茉莉は罪悪感で胸が痛んだ。

  「今日誕生日でしょ? あ、これは覚えてたんじゃないよ。小学校の文集見つけたから見てみたら書いてあっただけだからね」

  「…うん。そっか。どうもありがとう」

  「うん」

  「カズくんは七タさま生まれだから? 将来宇宙飛行士になりたいって書いてあったね」

  「見たの? そうだね、今から訓練しようかな」

  「カズくんならできそうで怖い」

  茉莉が笑うと、受話器の向こうで和人も笑った。

  「茉莉ちゃんはやっぱり漫画家になりたいって書いてあったね」

  「そう?」

  「うん。あ、もうお仕事終わったんだね、おつかれさん」

  「あ、うん。今日は早かったの」

  「誕生日なのに働けないよね」

  「そうだね」

  和人は嘘をすんなり受け入れる。和人も会社や仕事といった枠組みにあかるくない

  誕生日の後7時きっかりに家にいるOLを、寂しいとか思わないのだろうか。

  「茉莉ちゃん、今何してるの?」

  「え……つと…。今帰って来たところなの」

  「そう。じゃあこれから家族でパーティ1だね」

  「もうそんな歳じゃないよ。誕生日なんかおめでたくない」

  「そうかな。26歳の誕生日は1回だけだよ。ちゃんとケーキ食べて、ご馳走作ってもらいなよ。プレゼントはもらえた?」

  今はないのかもしれないけれど、きっと和人はおばあさんにケーキを買ってもらい、ご馳走を作ってもらい、プレゼントをもらったのだろう。あの生意気そうなガキが、それなりに喜んだりしたんだろうかと想像すると笑えた。

  「友達からDVDもらった。あと、枯梗ちゃん……お姉ちゃんから指輪とお花もらつた」

  「へえ。どんなの?」

  「ペリドット、誕生石がついた指輪と、茉莉花」

  「うわ!、いいね。優しいお姉ちゃんだね。話した時もすごく感じのいい人だった」

  「そうでしょ。わたしもお姉ちゃんの誕生日には枯梗の花をあげるの。なんか決まりごとみたいになってるんだ」

  「い1ねそれ。仲のいい姉妹なんだね」

  和人の声が耳に近い。くすぐったくて声がはしゃいで心が震える。ェアコンのついていないリビングは熱が範っていて、立っているだけで汗が噴き出してくる。茉莉はその場に座り込んで膝を抱えて顔を埋めた。

  「茉莉ちゃん、お盆過ぎに会えないかな」

  和人の申し出に、ハッとして顔を上げる。

  「お盆に東京に帰るんだ。ずっと家にいなきゃなんないんだけど、B日以降に会えないかな。会社ってその頃はもう始まってるのかな?」

  「大丈夫! お盆に仕事があるから、逆に都合がいい……」

  「本当? よかった。また連絡するよ」

  「メールして。待ってるから」

  「うん、ありがとう」

  会わない方がいいと戒めてきた気持ちをあっさりと破った自分への罪悪感に苦い気持ちが広がる。けれど会える喜びの甘美の方が選かに凌駕していた。

  「電話、どうもありがとう」

  「誕生日は1回だからね」

  「そうだね。ありがとう。今度はわたしが七タに電話するよ」

  「ホントに? 期待して待っとく」

  1年後、2人がどうなっていても必ずおめでとうを言おうと思った。あと4回、言えたらいいなと茉莉は思った。

  イベントは前後左右をオタクに採まれながら、この日のために何日もかけて作り上げた衣装をお披露目して満奥した。仲間たちとたくさん笑い合い、たくさん写真を撮り合った。

  「茉莉、最近絶好調だね」

  イベント後の飲み会を終え、沙苗と2人、同じ電車に乗る。

  「本のペースもいいし、コス衣装の腕も上がったよね」

  「愛だよ、愛」

  「茉莉もオタクになったなあー」

  「うわ、その言い方やめてよー」

  茉莉が眉をひそめると、沙苗はカラカラと笑った。

  「でもまあいいや。楽しいから」

  「そうだよ、人生楽しんだ者勝ちだよね」

  「沙苗ちゃんはさ、今までこう、進路に悩むとか、楽しいことないかなーとかって、苛々したりしたことない?」

  最終に近い車内には疲れきったサラリーマンと遊び疲れた学生がぐったりとシートもたに凭れていて気だるい空気が充満している。隣に座る沙苗が目をぱちくりさせて言った。

  「わたしだってあるよ」

  「そうなんだ」

  「当たり前じゃん。わたしだって結構悩むよー。スランプに陥ると抜け出せなくてつらいし。コスプレ衣装が思うようにできなきゃ焦るし。それにさ!、このままでいいのかなあとも時々思う」

  ほろ酔いの沙苗が色っぱい溜息を吐いた。ミニスカートの足をお構いなく組んで足先に引っかかっているサンダルをぶらぶらさせながら沙苗は続けた。

  「だってもう%じゃん? 周りは結婚するし、子供とかできちゃってるし、楽しいからっていつまでもこのままでいいのかなって」

  「確実なもの、が欲しかったりする?」

  茉莉の質問に沙苗は目で訳き返してくる。茉莉はあまり深刻にならないような声色で言った。

  「結婚だったり、仕事だったり……」

  「そうね1。親からは自立してるつもりだけど、自分が今どの位置にいるのかは、よくわかんないかな。楽しいんだけどひとりになるといつもどっか不安みたいのはあるよ。茉莉は?」

  「わたしは毎日だよ」

  茉莉が笑うと、沙苗はその意味を理解した上で小さく笑い返してくる。

  窓に映る互いの顔を眺めながら、沙苗は茉莉の肩に頭を寄せた。

  「もし、付き合ってる人がいたら結婚した方が楽かなとか、思っちゃうかもしれない。

  結婚すればとりあえず、こーゆー悩みからは解放されるわけでしょ。でも結局、楽と思ってする結婚なんて現実になったらやっぱりつらくなって逃げ出したくなるだろうし、自由気ままにやってる今がいいのかな、とも思う」

  「揺れるね」

  「据れるよ。まあ、仮定の話だけどさ。それでも揺れる」

  沙苗は足先のペディキュアに視線を落として咳くように言う。確証はなかったけれど、なんとなくその言い方が引っかかった。

  「もしかして、誰かいる? 本当に仮定の話?」

  茉莉が間を詰めると、沙苗の日焼けしていない類がサッと赤らんだ。

  電車が駅に着き、2人は降りたホームのベンチにまた座り直した。誰もいない夜更けのホームには昼間焼かれたコンクリートに安らぎをもたらすようなやさしい風が吹く。昼間の喧騒は選かに遠のき静寂に満たされていた。

  「好きってわけじゃないんだよ。でも好きって言われると悩む。いい人だし、パソコンとかも詳しいから話も合うし、一緒にご飯食べに行っても疲れなくて」

  「そーゆーのって大事だよね」

  「付き合えばいいって思う?」

  沙苗がウエーブのかかった髪を耳にかけながら、こちらを向く。自信に満ち溢れた眩い笑顔でヒロインの衣装を練っていた昼間からは似ても似つかないほど、照れながら話す沙苗は心細い子供のような顔をしていた。

  「一緒にいて楽しい人って好きになる確率があるんじゃないかな。付き合ってみるの

  もいいと思うよ」

  「男と付き合いながら原稿できるかな?」

  組るように訊いてくる沙苗に、茉莉は声を出して笑った。

  「愛でしょ! クロボへの愛があればできる!」

  「そうかなあ」

  「そうだよ! とりあえず始めなきゃ何もわからないけど。修羅場になったらわたしが助けるから!」

  「茉莉! いい人すぎ!」

  「沙苗ちゃんは師匠ですからね」

  沙苗は解放されたような顔で茉莉をギュッと抱き締めた。夜風が2人の足元を抜けていく。ほんのり冷たさを感じた風に秋の気配が垣間見えた。

  「沙苗ちゃん」

  「んー?」

  「頑張って」

  キヤミソールの背中を叩いて、葉莉は広くように言った。

  2人は一緒に立ち上がると子供のように手を繁いだ。優しい彼女の恋がうまくいきますように。美望をサンダルの裏で踏み漬して、茉莉はぎゆっと沙苗の手を握り締めた。

  今一瞬ですべてが叶うことをいつも願ってる。

  すべては自分で選んで自分で進まなきゃいけないって、いっぱいいっぱい痛い思いをして、その傷で知ったはずなのに、心はいつも晴れない。全部手に入れた人って何が見えるんだろう。

  わたしは何が欲しい?

  ああ、時間か。一番いらないものだったはずなのに浮かんだ選択肢。同時に浮かぶあの人の笑顔。

  命に執着を持っちゃダメよ。

  死ぬことが怖くなったら、わたしはもう笑えなくなるんだから。

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